40代無鉄砲おばさん海外へ行く

子育てを終えた40代独身。後は自分の人生でしょ!と、初海外旅行へ。 忘れっぽいので自分用忘備録的な感じで書いていきます。

コチ2

「じゃあ僕は行くよ」

その男は私を燃えるように真剣な目で見ながらそう言った・・・。


フォートコチからローカル船に乗って帰る時のこと。

「どこから来たの?」

「日本」

彼とはそんな会話をしただけだった。

超満員の船はゆっくりとエルナクラムへ戻っていく。

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途中からスコールが降り出し、エルナクラムに着いた船から屋根のある所まで傘をさす。

彼は私の傘の中に入ってきて肩を抱き屋根まで一緒に走った。

イヤな感じはしなかったがインド人の触り癖にはうんざりしていた。

まあ濡れたくなかっただけかもしれないけど。


外はすごいスコールでとてもじゃないけど歩けなさそう。

私は船乗り場の待合室のベンチに腰をおろし雨がやむのを待つ事にした。

すると彼は隣に座って話しかけてきた。

めんどくさいインド人だったかと思いつつも退屈なので少し話をすることにした。


彼はケララ州の山奥の村から仕事を求めてここコーチへ来たそうだ。

でも思うように仕事は見つからず、お金もないので鉄道駅のベンチで寝るつもりだとも。

朝食は食べられず昼はお寺で施しを受けた。

そう彼は拙い英語で私に話した。


「コーチで仕事が見つからなかったのなら次はどこへ行くの?もっと北のほう?」

そう聞くと、

「言葉が違うからケララ州からは出られない」

と、彼。

インドってのは広くて厄介な所のようだ。


「あなたなら私を助けることが出来る」

「ホテルの部屋をシェアしてくれないか」

「僕はあなたを騙す気なんて全くないから安心して」

「愛してる、結婚してくれ」

「僕はあなたと一緒に日本へ行きたい」


どれも何度もインドで言われた言葉だ。

当然のことながら全ての言葉を信じちゃいない。

そして飲み食いするお金もない人にしては身綺麗なのも気になる。

取り合わない私に運転免許証やIDカードまで見せてくる彼。

めんどくさい・・・。


雨もやんだのでホテルに戻ろうとするが彼は付いてくる。

なのでホテルの近くのマーケットへ行くと言うと彼もマーケットへ行く所なんだそうだ。

さすがにこれ以上一緒にいたくなかったので一緒には行きたくないと伝える。

そして冒頭の言葉だ。


私は彼の話を信用出来なかった。

でも本当に困っていたのなら彼は私を恨んでいるだろうか?

鉄道駅のベンチで寝たんだろうか?

翌日また寺で施しを受けているのだろうか?


インドで物乞いに遭うといつも心の中で葛藤する。

それを最近メッセージのやりとりをしているインド人男性に話すと彼はこう言った。


「何が正解かはわからない。自分は昔貧乏だった。でも頑張って今の自分になった(運転手付きの富裕層)。お金を渡したら頑張るチャンスを奪ってしまう気がする。だからあげない。我慢してあげない。」


我慢してあげない。

衝撃的な言葉だった。


あげなかった自分。

そこに後味の悪さを感じていたことに気付く。

お金をあげる行為。

それは私にとっては自分の問題だった。

私は彼が本当のことを言っているのか、騙そうといているのかしか考えていなかった。

彼にとって何が1番最善なのかなんて考えもしなかった。

だから友達の言葉は衝撃的だった。


もう会うことはないだろう彼。

頑張るチャンスを手にした彼。

ケララ州から出る為に頑張って言葉を覚えたり、頑張って仕事や住居を見つけ次のステップに進んでいけるといいな。


と、同時に私も頑張らなければと思う。

今は頑張れる何かを探しているところ。

頑張れる何かは自分の中にあるのはわかっている。

その幅を広げたいからと思いこうして旅をして、色々なものを見て、感じて、吸収して、消化したい。

40代半ばでこんな若い頃にやるようなことをやってるって少し情けないとは思うけれど年月は巻き戻せない。

今後の人生で私が1番若いのは今だ。

Twitterで見た言葉を胸に今の自分がやりたいと思うことをしたいと思う。